松宮慎治の憂鬱

'04京都橘高校卒→'08大阪教育大学卒、私立大学に職員として奉職→'17広島大学大学院教育学研究科博士課程前期高等教育開発専攻修了,そのまま後期課程在学中。とあるきっかけ(http://shinnji28.hatenablog.com/entry/2015/01/10/050000)があって、実名でブログを始めることにしました。特に憂鬱なことはないのですが、大学職員仲間がタイトルを考えてくれたので、そのまま使います。

高等教育基礎論Ⅱ(比較・歴史的研究)課題①イギリスの学校教員の勤務条件と給与

高等教育基礎論Ⅱ(比較・歴史的研究)、秦由美子先生担当回の課題です。
課題となっていたのは、教育調査集第134集『諸外国の教員』(文部科学省)pp.82-87.でした。
普段の仕事が教職課程なので、イギリスの教員養成に触れられたのはよかったです。

諸外国の教員 (教育調査)

諸外国の教員 (教育調査)


2015.4.27

高等教育基礎論Ⅱ(比較・歴史的研究)課題①

イギリスの学校教員の勤務条件と給与

M156296 松宮慎治

いただいた資料をもとに図表を含めた要旨をまとめました。また、その結果として理解できたことと疑問点をまとめました。

1.要旨
1-1.前提
 イギリスの学校教員の給与は『教員給与及び勤務条件に関する文書』(School Teachers’Pay and Conditions Document:STPCD)に基づき、雇用者との個別の雇用契約で定められる。STPCDは教員の種類に応じた給与体系や勤務条件の基本が規定されている基本文書で、教育大臣が学校教員調査委員会(School Teachers’Review Body:STRB)の勧告を受けて毎年定められるものである。STRBは1991年「学校教員の給与及び勤務条件に関する法律」(School Teachers’Pay and Conditions Act 1991)により設置された常設の政府諮問機関であり、総理大臣を委員長とした最大9名の委員から構成されている。
1-2.勤務条件
 授業時間の配分など具体的な運用は雇用者や校長の裁量に委ねられているものの、基本的な勤務時間・日数、職務内容はSTPCDによって次のとおり規定されている(表1*1)。
年間195日の勤務日数は、雇用者又は雇用者が指示した場合は校長が特定することになっている。校長はこの勤務日数に対して年間の勤務時間である1,265時間を配分することになる。また、基本的な職務内容に規定される「専門職としての職務」は、授業計画の作成、授業の準備、児童・生徒の成績の評価や記録などのことを指している。
1-3.給与
 教員給与はSTRBの勧告に基づいて教育大臣が毎年改める。給与表はSTPCDに示されており、①一般教員(classroom teacher)②上級教員(advanced skills teacher)③管理職教員(leadership group)④仮教員(unqualified teacher)の4区分から成る。上級教員(advanced skills teacher)は高い専門性をもち、勤務時間の2割程度を他教員に対する助言、モデル授業の実施や優れた実践の普及、教材開発、新任教員指導などにあてる。管理職教員(leadership group)は校長、副校長および校長補佐を指す。このうち、一般教員(classroom teacher)、上級教員(advanced skill teacher)、管理職教員(leadership group)の3区分における教員の給与表をまとめると次のとおりとなる(表2*2)。
 一般教員(classroom teacher)の給与表は、基礎給与スケール(M1~M6)と上級給与スケール(U1~U3)にわかれている。基礎給与スケールの間は定期昇給の形をとるため、通常30歳前にはM6に到達するが、上級給与スケールに進むためには校長等の実績評価を受けて合格する必要がある。これを実績給与ライン(performance threshold)と呼ぶ。実績評価の対象となるのは、教科やカリキュラムに関する知識と理解、教授法と評価、児童・生徒の成績、学校運営を含むより広い専門性、指導上の資質の5点であり、現在約95%の申請者が実績給与ラインを通過している。
上級教員(advanced skills teacher)の給与表は1~27段階からなり、学校理事会と上級教員は毎年業績基準に合意し、その成果を見直すことになっている。
 管理職教員(leadership group)の給与表は43段階(L1~L43)からなり、校長給与の決定には実績評価が加味され、副校長と校長補佐の給与は一般教員の最高額より上に設定されている。

2.理解できたこと
 いただいた資料を購読しまとめた結果、イギリスの学校教員について、日本の学校教員との異同を中心に次の四点が理解できた。
 第一に、給与面を含めた具体的な勤務条件を国家が定めている点が日本と大きく異なる。日本の場合、公立学校の教員の身分と服務は教育公務員特例法等の法令に位置づけが存在するものの、その内実はあくまでも概念的なものに留まっており、具体的な給与や条件は各地方自治体にその裁量が委ねられている。
 第二に、日本と比較して勤務条件から時間的余裕の大きさがうかがえる。表1からイギリスのフルタイム教員の1日あたりの勤務時間と年間休日を大まかに算出すると、前者が約6.5時間、後者が約170日となる。これは日本に比べて大変余裕のある条件であると思われる。
 第三に、職務内容が「専門職」として厳格に定められている。このことは、授業計画の作成、授業の準備、児童・生徒の成績の評価や記録が職務内容として規定されていたり、昼食時の児童・生徒の監督義務が職務の対象から外していたりするSTPCDの規定から類推される。日本の学校教員も「専門職」としての社会的評価は一定程度なされていると思われるが、実際の職務は多岐に渡っている(公務分掌、事務処理、保護者対応、部活動等)ことは周知であろう。
 第四に、「一般教員」「上級教員」「管理職教員」の区別が明確になされている。このことは、給与表(表2)の相違から類推される。「一般教員」と「上級教員」、「上級教員」と「管理職教員」でわずかにテーブルが重複してはいるものの、「一般教員」と「管理職教員」が重複することはない。また、「管理職教員」最大で1,800万円超の報酬が支払われる。日本の場合、公立学校の教員は公務員であることから、給与体系は一般に年功序列となっている。ゆえに、役割の区別としては「非管理職(一般教員)」と「管理職(管理職教員)」の2層構造となることが一般的で、給与面での大きな差は生まれない。「上級教員」の役割も経験の蓄積によってじょじょに果たすことになると思われるため、イギリスよりも給与差が小さく、役割分担が明確でなく、年齢によるグラデーションにより経年で役割が変化していくのがイギリスとの違いから見た日本の特徴のひとつではないかと考える。

3.疑問点(知りたいこと)
 資料を購読した結果わからなかったことが二点ある。
 第一に、イギリスの教員の給与体系と年齢の関係である。一般教員の場合は「30歳前にはM6に達する」とあるとおり、一定の時期までの年齢の関与がうかがえるが、それ以降は完全な成果報酬体系になるのか、一部年齢も加味した評価がなされるのかが疑問である。
 第二に、「上級教員」の占める割合である。「95%の申請者が実績給与ラインを通過している」とあるが、総員のうちの何割が「上級教員」への道を歩む設計になっていることによって、求められる役割も少し変わってくると感じたことから、知りたいと考えた。

*1:省略

*2:省略