松宮慎治の憂鬱

'04京都橘高校卒→'08大阪教育大学卒、私立大学に職員として奉職→'17広島大学大学院教育学研究科博士課程前期高等教育開発専攻修了,そのまま後期課程在学中。とあるきっかけ(http://shinnji28.hatenablog.com/entry/2015/01/10/050000)があって、実名でブログを始めることにしました。特に憂鬱なことはないのですが、大学職員仲間がタイトルを考えてくれたので、そのまま使います。

高等教育基礎論Ⅰ(社会学的研究)遠隔課題①―今田高俊編『社会学研究法・リアリティの捉え方』(有斐閣アルマ)の要旨(序章:リアリティと格闘する)―

次から次へ課題が襲ってくる、、
今日の課題は、こちらの本の序章の要旨です。
社会人のための遠隔用課題でした。
きついはきついけど、勉強になる。

社会学研究法 リアリティの捉え方 (有斐閣アルマ)

社会学研究法 リアリティの捉え方 (有斐閣アルマ)


2015.4.21

高等教育基礎論Ⅰ(社会学的研究)遠隔課題①

今田高俊編『社会学研究法・リアリティの捉え方』(有斐閣アルマ)の要旨(序章:リアリティと格闘する)

M156296 松宮慎治

以下のとおり要旨をまとめました。

1.社会学と研究法(前提)
 科学のうちのひとつである社会学が現実問題の解明に有効であるためには、まず信頼できる研究法が必要となる。科学とは問題となる現象を記述し説明することであり、これらをいかに行うかが研究法だからである。また、科学の究極の目的はリアリティ(現実)を捉えることであると言える。そのリアリティの捉え方は、「どのような分析を行い、それによってどう理解が深まったか」という研究法に依存する。すなわち、リアリティは研究法によってとらえられると考えることができる。そこで本書では、信頼できるさまざまな研究法を紹介している。特にこの序章では、研究法の大分類である「意味解釈法」「統計帰納法」「数理演繹法」に言及する。

2.意味解釈法とは何か
 意味解釈法は、個別で1回限りの事象から物事の本質を解明する手法であり、参与観察、ドキュメント解析、エスノグラフィー、モノグラフ法、会話分析などがその代表例である。
たとえば、特定の社会に入り込んでさまざまな聞き取り調査を行い、調査記録をまとめる手法をエスノグラフィー(モノグラフ法)と呼ぶ。このとき、研究対象となっている集団に入り込み、比較的長期にわたってそのメンバーとしてふるまうことを参与観察という。一方、そのように現場に出かけることのない手法もある。図書館や博物館で記録資料を収集したり、そうした記録内容を分析したりするドキュメント解析はそのひとつである。
 意味解釈法は、事象の本質を解釈により存在完成させるという性格をもっている。したがって、例証として具体的な経験データを挙げることになるが、その例示や例証は意味の本質を了解可能な存在に高める(解釈する)ための素材にすぎないと言える。

3.統計帰納法とは何か
 統計帰納法は、実験や大量データから一般化された経験法則によって現実を捉える手法であり、データを図表にあらわしたり、クロス表分析、相関分析、多変量解析などをおこなったりする計量分析がその代表例である。
 もっとも基礎的な分析法は社会調査で得られたデータを表やグラフにして傾向を調べる記述分析であるが、そのように状態を記述するだけでなく、モデルによってメカニズムを分析する手法も存在する。この例として、社会階層と社会移動の研究の代表的なモデルである地位達成過程のパス解析がある(Duncan,1966)。これは現在の職業的地位を獲得するまでに出自がどの程度影響しているかを計測するモデルであり、社会階層に関係なく機会均等な社会が実現しているのかどうかを実証することを目的としている。この分析を行うには、ランダムな標本を抽出し、質問紙に基づいて親や子どもの学歴や職業のデータを収集し、得られたデータからそれぞれの因果規定力をあらわす値を求めることが必要になる。さらに、この値が社会、母集団全体に対しても成り立つか統計的に検定することとなる。こうした作業を経て、社会階層に関係なく機会均等な社会かどうか、現状分析と評価を加える。以上が典型的な統計帰納法の手続きである。

4.数理演繹法とは何か
 数理演繹法は、普遍的に成り立つ理論法則によって現実を認識する手法である。この手法の特徴は、具体的な経験に直接かかわるのではなく、抽象的な仮説を設定し、そこから命題を導出することで事象の認識に至ろうとすることである。この手法には「効用」と「落とし穴」が存在する。
 「効用」は五点あると考えられる。第一に定式化が可能であるため、多様な解釈を許さないことである。第二に文章に比べて表現が完結で済むことである。第三にイデオロギーや思想背景から自由であるため、客観性を担保できることである。第四に、ある条件のもとでどのような帰結が導かれるかに関する推論が容易であることである。第五に帰結の経験的テストが容易であることである。
 「落とし穴」は二点あると考えられる。第一に、難解な数式を並び立てることが自己目的化してしまうことで、社会学的な問題設定とその解明への意識が希薄となり、リアリティが喪失する危険性があることである。第二に、文章表現で事足りることをわざわざ表現してしまい、数理モデルとしての条件を備えていない似非数理が用いられる危険性があることである。

5.結び
 序章では「意味解釈法」「統計帰納法」「数理演繹法」の3タイプの大分類を説明した。これらはリアリティの切り取り方が異なるだけであり、タイプに優劣をつけることはできない。実際の社会現象は複雑であるから、特定の研究法のみを用いてリアリティを把握するのは困難である。リアリティを十分に把握するためには、これらすべての方法を適切に組み合わせて動員しなければならないだろう。