松宮慎治の憂鬱

このブログの情報は古く,今後更新しませんので,特に教職課程関連の参照元とすることは避けていただければと思います。ご迷惑かけます。2023.2.19

2015年度大学行政管理学会若手研究奨励の奨励金申請書を公表します

2015年度大学行政管理学会若手研究奨励に採択されました(研究課題「大学の教職課程に求められる学生の資質能力向上に関する研究」) - 松宮慎治の憂鬱
昨日申し上げたように、2015年度大学行政管理学会若手研究奨励に採択いただきました。
この申請書の内容を以下のとおり公表します。

申請者(代表者)

松宮 慎治(まつみや しんじ) 28歳
神戸学院大学 教務センター 教務事務グループ 
TEL:078-974-1551  E-Mail:shinnji28@j.kobegakuin.ac.jp

分担者

なし

テーマ

大学の教職課程に求められる学生の資質能力向上に関する研究

研究内容(概要・計画等をできるだけ詳しく記入)

1 背景
 中央教育審議会は,これからの初等中等段階における学校教員(以下「教員」という。)に求められる資質能力について「学び続ける教員」というキーワードを示した(『教職生活の全体を通じた教員の資質能力の総合的な向上方策について (答申)』,平成24年8月24日)。「学び続ける教員」は,高度化・複雑化する社会を生き抜く力を持つ子どもたちを育てるため,まずは教員自身が将来にわたって学び続けることで,高度な専門知識や新たな学びを提供できる実践力を獲得しなければならないという考え方に基づいている。また,この答申ではこれまでの教員養成について,大学での学修と就職後の教育委員会での研修が分断されており,教職生活全体にわたって学び続けられる体制が不十分であることが指摘されている。したがって,今後の大学における教員養成では,教育委員会との連携・協働を積極的に推し進めることと併せて,教員として就職したのちのことも視野に入れながら学生の資質能力向上に寄与することが求められている。
2 問題と目的
 学生の将来にわたる教職生活全体を視野に資質能力を育成するためには,まずもって大学の教職課程で備えておくべき資質能力が明らかでなければならない。一方,わが国の大学における教員養成は,教員免許状の取得を卒業要件外に位置づける課程(いわゆる「開放制」)と卒業要件内に位置づける課程(いわゆる「目的養成」)とに二分されている。教員免許状の取得が前者においてはオプションのように,後者においては前提のように,教育課程でいわば両極端に取り扱われてしまうことから,大学の教職課程で備えておくべき資質能力が平準化されて明らかにされているとは言い難いのが現状であると思われる。以上のことから,大学の教職課程で備えておくべき教員としての資質能力を明らかにし,大学の教員養成におけるその向上の可能性を示すことを目的とする。
3 方法
 文献調査とインタビュー調査を行う。文献調査では,教員としての資質能力に関する先行研究を参照し,大学の教職課程で備えておくべきレベルを検討する。インタビュー調査では,教員採用試験合格者に大学生活を省察させるインタビューを行う。このとき,合格に至ったプロセスと大学生活とを関連づけることによって,大学の教職課程で備えておくべき資質能力を分析する。教員採用試験合格者を対象とする理由は,当該学生が教員として将来にわたって活躍できるかどうかの担保は不明確であるにしても,少なくとも大学の学部段階ではその素養があると教育現場に認められたとみなせる可能性が高いからである。なお,インタビュー調査では分析枠組みとして修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ(M-GTA;Modified Grounded Theory Approach)を用いる。M-GTAはデータに密着した分析から独自の理論を生成する研究法であり,質的データの分析に対して根強く提起される「自分の関心に都合のよいデータだけを抽出してまとめたのではないか」という批判に十分応えうるものである(木下康仁著『グラウンデッド・セオリー・アプローチの実践』弘文堂,2003)。
4 準備・環境
 本研究の準備として,申請者が2012年6月以来大学における教職課程の担当者として活動してきたことを挙げる。具体的には,自大学においては,教職課程を履修する学生の資質能力向上のために,学生同士の学び合いが可能となる環境整備に努めることで学生との信頼関係を築いている。また,2014年5月からは,全国私立大学教職課程研究連絡協議会の専門委員会である教員免許事務検討委員会の委員として,教員養成制度下における課程認定制度に関する研究に従事してきた。この活動は,全国私立大学教職課程研究連絡協議会第34回研究大会,2013年度阪神地区私立大学教職課程研究連絡協議会第3回課題研究会等で発表した(「6 最近発表した主要な研究成果」参照)。こうした活動を通して,全国の教職課程担当者と個人的な協力関係を構築している。ゆえに,調査協力者の候補には,自大学であれば直接的に,他大学であれば教職課程担当者を通じて間接的に協力を依頼することが可能である。調査協力者には,個人情報の提供に関する同意を依頼し,調査の過程で知りえた情報については研究以外で使用しないものとする。環境として,本研究は質的研究の専門家である神戸学院大学人文学部人間心理学科の教員の面接指導を定期的に受けながら遂行することを挙げる。必要に応じて電話やe-mail等を使い助言を仰ぐ予定である。
5 期待される成果
 大学の教職課程で備えておくべき教員としての資質能力を明らかにし,大学の教員養成におけるその向上の可能性を示すことで,わが国の大学における教員養成全体に貢献することが期待される。また,研究成果を大学行政管理学会で発表する。
6 最近発表した主要な研究成果
6.1 学会発表
(1) 松宮慎治(2014)「判別分析を用いた4年ストレート卒業に関する探索的研究」大学行政管理学会第18回定期総会・研究集会発表,資料集pp.57-58.
(2) 松宮・清水寛之(神戸学院大)(2014)「推測統計を用いた教学支援に関する試み-4年ストレート卒業に関する判別分析の適用-」大学教育学会第36回大会発表,要旨集pp.176-177.
(3) 松宮(2013)「教職協働のあり方に関する一考察~教職課程認定申請業務を事例として~」大学行政管理学会第17回定期総会・研究集会発表,資料集pp.117-118.
6.2 研究報告(活字)
(1) 松宮(2015)「教職課程認定申請の動向について―指摘事項を中心に―」『教師教育研究』全国私立大学教職課程研究連絡協議会,第27号(掲載予定)
(2) 松宮(2014)「課程認定申請大学からの事例報告①~神戸学院大学の指摘事項を中心に~」『阪神教協リポート』阪神地区私立大学教職課程研究連絡協議会,No.37,pp.82-90.
6.3 研究報告(口頭)
(1) 松宮(2014)「課程認定申請大学からの事例報告~指摘事項を中心に~」全国私立大学教職課程研究連絡協議会第34回研究大会第5分科会発表,要旨集p5,p37
(2) 松宮(2013)「課程認定申請大学からの事例報告~指摘事項を中心に~」2013年度阪神地区私立大学教職課程研究連絡協議会第3回課題研究会発表(要旨集なし,配付資料のみ)

奨励金使途

交 通 費: 30,000円(内訳:インタビュー調査のため。10~20人程度の調査を予定)
書 籍 代: 55,000円(内訳:姫野完治著『学び続ける教師の養成』大阪大学出版会,2013,ほか10冊程度の専門書を購入予定)
文献複写代: 10,000円(内訳:30件程度の複写を予定)
消 耗 品費: 5,000円(内訳:封筒,切手ほか)
合   計:100,000円

※審査結果

―省略-