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松宮慎治の憂鬱

'04京都橘高校卒→'08大阪教育大学卒、私立大学に職員として奉職→'17広島大学大学院教育学研究科博士課程前期高等教育開発専攻修了,そのまま後期課程在学中。とあるきっかけ(http://shinnji28.hatenablog.com/entry/2015/01/10/050000)があって、実名でブログを始めることにしました。特に憂鬱なことはないのですが、大学職員仲間がタイトルを考えてくれたので、そのまま使います。

大学行政管理学会大学改革研究会第6回ワークショップ「要支援学生への具体的な支援について~ケースワークから考える実現可能な支援~」に参加

標記の研究会に参加しましたので、以下のとおり内容のメモを公開します。今回はお手伝いのような気持ちで気楽に参加しました。珍しく小規模で、これはこれでよかったと思います。企画者のみなさんお疲れさまでした!
掲載にあたり許可は得ておりませんので、掲載することそのものへの問題や、内容の修正の必要等ありましたら、ご一報ください。

1.日 時 2014年12月13日(土)13:00~17:00
2.場 所 神戸大学 六甲第2キャンパス 〒657-8501 神戸市灘区六甲台町1-1
3.対 象 入職1年目~10年目までの若手職員(10年目以上の方でも、テーマに関心のある方は参加可能)
4.テーマ 「要支援学生への具体的な支援について ~ケースワークから考える実現可
能な支援~」
5.趣 旨 講演、グループワークを通して要支援学生へのサポートについて考える
6.参加者 16名
7.内 容 

【企画①】(講演)

「要支援学生への支援について(学生相談室カウンセラーの立場から)」眞田知子氏(神戸学院大学カウンセラー)

・自分の学び方が独特。知識よりも体験から入るという学びをしてきた。今も学生相談をどんな風にしてきたらいいかということを、実際にやりながら考えている途中だ。あまり自分の講演は具体的ではないのではないかという心配がある。具体的なイメージはみなさんそれぞれで考えてもらって、何か持ち帰ってもらいたい

1.大学で支援の必要な学生

・何か困っている学生。本人の困り感が周りから見えないとか、困っていると一言でいっても色んなレベルがある。本人が困っていなくても周りが困っているとか。支援をするときに問題になるのが、学生がどんな学生かということ。それから、支援者の側の属性、専門性、知識、パーソナリティ、支援する部署。そういうものを総合的に考えることが必要だ
・カウンセラーにも色んなカウンセラーがいる。カウンセラーだからこういう支援をしなければならないと括ってしまうと問題だ。発達障がいの苦手なカウンセラーもいる
・教科書にはこういう学生にはこう、と書いてあるが、その前に支援者の属性を考えなければならない
・支援する学生にも色んなレベルがある。目に見える問題も目に見えない問題もある。半年くらい付き合ってみて本当の問題が見えたりもする。DVやいじめなど。今目の前にいる学生の問題は、最初は見えないことが多い
・問題を自分で自覚できているかできていないか、ということにも個別差がある。発達障がいでも、自分で申し出る人もいれば、そうでない人もいる。自覚しているかどうかも見た方がいい
・問題を言葉にできるかどうか。いつもデリケートだなと思うが、例えばすごく上手に話せる人もいる。でも、よく聞いてみたら、本人の中には自分が言いたいことを言えている実感がないということがある。こちらが見る感じと本人の実感にズレがあることがある。あるいは、多弁だが自分の本音は言えないというようなこともある。一番極端なのがアスペルガーや発達障がいだ。言葉にならず行動で終わってしまい、何が問題かわからず終わってしまう。2~3年してやっと言葉にできてくる。いかに言葉で伝えられるお手伝いができるか。それにも時間がかかる
・目の前の学生さんがどんな人でどんな状況にあるのか。支援の必要な学生の問題を見立てること、かっこよく言えばアセスメントすること。これが最初にありきである。カウンセラーでも初回が勝負なのだが、1回ではわからない。そうした場合、問題がはっきりわかるまで、付き合ってもらう。問題がある程度はっきりした段階で初めて支援を考えることができる。わかっていないうちから支援することはできない。かえって問題がこじれることがある

2.学生・学生の抱える問題をみる視点

・一つの視点ということで、これがすべてではない
・3つの視点から見てみる。まずはソシオ(社会的な状況)。この人は母子家庭、難しい地域にいる、一人暮らしだ、ゼミの先生と仲がいい、このように、どんな社会環境にいるのかという視点。その次にバイオ。障がいを持っているとか、知的レベルが高いとか低いとか。片耳が聞こえないなどの体の特徴。最後にサイコ。私たちはここを扱うことが多い。どんな心的状況なのか。病気か病気でないとかそういうことではなく、1人でいても平気な人だとか、寂しがりだとか、意地っ張りだとか、プライドが高いとか。難しくなれば病的なところがあるとか。色々な形で心の状態をみる
・とにかく、色んな角度から学生を眺めてみること。その場合、自分1人の目でも見てもいいが、学生は場所が変われば変わるので、色んな人が見ているならば、情報を共有して多角的に見るのがいい。そういうことから、支援する点を探していく
・問題がある場面だけでなく、環境の良さも見てみる。親がすごく見守ってくれている、すごくいい友達がいる、大人にはかわいがってもらえるなど。色んな強みもあるので、そこにも着目すれば前向きに支援できる
・できる限り社会資源を活用したい。なかなか1対1で支援するといっても限度がある。みんなで知恵を出し合ってみると意外とことが進んだりする

3.学生支援(学生相談室)の事例

―事例は省略―
・学生支援は、下手をするとその人の一生を変えてしまう。無念だなと思うこともある

4.学生を支援するうえでの重要なポイント

・自分自身が感じることなので、重要かどうかわからない
・支援をする前に、その学生をよく見ること。丁寧にかかわって、それから具体策に走ることが必要。そうでないとタイミングがずれたり、必要なものを与えていなかったりする。乱暴にすると学生が傷つくこともある
・短期的でいいのか?長期的でいいのか?という見通しがいる。カウンセリングでも見通しをもつ。目標を想定する。ある程度の計画性がないと、行き当たりばったりな支援だと行き着くところにいかない。それを考えると、支援者も安心感をもったり、必要な柔軟性を持ったりすることができる。支援する学生よりも一歩先を見る
支援でもなんでもそうだが、信頼関係。これに尽きる。自分の思いだけでやってもダメな気もする。自分はあなたのサポートをしていく味方だということが伝わらないと相手はこない。ラポールを形づくること。特にいじめにあってきたとか、先生とうまくいかなかったとか、虐待を受けてきたとか、そういう人は信頼関係を作ること自体が難しい。そういうときは焦らず信頼関係を形づくっていくこと
・人間なので、相性やうまくいくとき、いかないときもある。思い切って支援者を変えてもいい。結局は信頼関係がベース
【質問】
・お話の中で、学生をさまざまな角度から見立てることが重要だというお話があった。どのレベルまでを学生対応の職員が持つべきなのかということがいつも悩みだ。人間関係でうまくいかない部分をどこまで持つべきか
→本当に難しいところ。職員によくしてもらって手厚くしてもらったという学生もいた。「どこまで関わったらいいのか」という悩みはある。まず一つは、支援者の役割の中でやるのが基本かなと。職員としての立場を越えるか越えないか。不安な気持ちが出てきたときは考えた方がいいかもしれない。不安な気持ちになったときは、同僚やカウンセラーに相談してもいい。枠を超えた時は自分の中に不安な感じが必ず出ている。それが妥当かどうか。続ける場合は、誰かに知っておいてもらう。ギリギリの線でやらないといけないときも中にはある。踏み越えてもいいが、踏み越えている自分を知っておいてくれと周りに伝えておくこと。どうしても親身になると巻き込まれてしまうことは現実にある。1人ぼっちで支援しないこと。支援の必要な学生は一筋縄でいかないことも多く、向こうが踏み越えてくることを望むこともある。私たちは、カウンセリングルームのような枠が守ってくれる。でも職員の場合は、「大学のキャンパス」という曖昧なもの。だから難しい。支援しているとキリのない人もいる
・支援のタイミングが重要だというお話があったと思うが、その推し量り方はどうすればよいのか
先走ってしまうことが多い。周りが支援に慣れている。本当に本人が必要としているのか。本人がきょとんと蚊帳の外に置かれていることもある。手遅れになってもまずいが、もたもたじっくり検討しながらやった方が多い。支援者の自己満足になってはいけない。本人と家族がその支援に満足しているかどうか、必要としているかどうか、そういったことをすり合わせながら、確認しながら支援した方がいい。支援される側が納得できているかどうかが重要
・情報はどこまで共有してよいものか?本人に了解をとらなければいけないか、学生支援という枠組の中ではある程度許容されるのか
実際の現場では守秘義務をガチガチにしてしまうと動けない。「大学全体の守秘義務」と考えている。よっぽど、このことを学生に言わずに伝えてしまうと学生の立場が悪くなる、そういうようなことであれば本人の了解をとる。ただ、支援に必要なら情報を共有し、支援者が守秘義務を守ってくださいということになる。「他のカウンセラーがこういうことを言っていたよ」というようなことを言わないように

発達障害学生と怠学生に対する支援について~教務課窓口業務における対応を例に~」村山孝道氏(京都文教大学職員)

・学生の中でぼーっと過ごしている学生。あまり大学で何も残さず就職で苦労する人。困っていないと思っていない人を、困っていることに気づかせて、鍛えて一人前にして卒業させるということを主にしている。マイナスをゼロにするというよりも、ゼロをプラスにする。こういうことが得意
・再来年4月に施行される障害者差別解消法のレビューをしたい。さらに、我々の普段の業務への問題提起をしたい。大学は社会に出る前の最後の砦だ。怠学生をいっちょ前にする厳しさ、不可抗力の事態で困っている学生への教育的配慮、障害によって困っている学生への発達促進支援の機能を担い、最終的には全員に自律した良き社会人として巣立ってもらうことを目指す
(やらなさすぎ・やりすぎ)
発達障害学生は、定義があり人数にも統計がある。診断書を持つ人と持たない人がいる
・怠学生は、障害が原因でなく、怠ける、ルールを守らないなどの行動をとる
教務の窓口には次々に学生が来る。一期一会なので、瞬間的な対応をし、それを組織、仕組みとして支えることになる他部署からは堅いやつだとおもわれることがあるが、学生とは個人個人と長く付き合うようにしている。でも、その手法では3000人の学生に等しいサービスは提供できない
・窓口で起こる事象として、発達障害と怠学生には共通点がある。期日後にレポートをもってくる。毎回ヘマをする。話を聞かない。指示を無視する。思い込みが激しく不遜な態度をとる。手書きの文字が汚い。ミスの訂正が雑でなっていない。シワシワの提出物を出すetc
・教務の窓口に来る学生は、割合としては怠学生の方が多い。ただし、そうでない人ももちろんいる
(支援のゴール)
発達障害学生:自分自身の特性を認識し、自己理解を進めながら適切な対処法を知ることによって、将来的な自律を目標とする発達促進的なサポートである(西村、2013(
・怠学生:社会の厳しさを知り、ルールを学び、自立した社会人になることを目標とする発達促進的なサポート(村山)
共通点は、自立した良き社会人に育てること
・職員の役割は、要支援(怠学)には指導を、要支援の学生には発達促進を、SOS状態にある学生には教育的配慮をそれぞれ行い、よき社会人にすること
発達障害と怠学生には支援に差異と共通点がある。差異は、前者は特例を是とし、後者は特例を非とすること。発生する事象は似ているのに、対応は真逆になることがある。共通点は否定的な物言いは避けて肯定的に話すこと。抽象的な言葉や比喩は用いず正確で具体的な案を表現すること
・正しい対応が不可欠だが、判断はとても難しい。こうしたことに関するSDは4.4%で、他のテーマと比べて最小値である
・支援を安定性と個別性の2軸で見た時に、安定性が高く個別性が低いものは、「平等」で、行き過ぎるとお役所仕事にある。この対局にあるのがリッツカールトン
(結論)
・組織:平等性と安定性を保ちつつ、具体的で理にかなった支援の仕組みが必要。硬直化・思考停止を防ぐ具体的な仕組みも必要(職員個々人のやる気や誠意まかせにしない)
・個人:組織が見落としがちなステイクホルダーの個別具体的な「SOS」を察知する個人的能力を磨き、しかし個人的・感情論的な判断に基づく支援ではなく組織の能力に帰結させる
(現状への課題意識)
・障害学生を誤って怠学生と決めつけていないか
KKDに頼っていないか(リスクを組織的に軽減できているか)
・ルール一辺倒の「お役所仕事」(思考停止状態)になっていないか?
・支援一辺倒で怠学生への指導機能が疎かになっていないか(人数比では怠学生の方がボリュームゾーン
・法令施行後はさらにその傾向が増すのではないか
・我々職員個々人は「平等論」と「正義論」の整理をしっかりつけているだろうか
・「正義」を美化しすぎていないか。リスクの評価ができているか
・「正義」を組織的に安定的に提供できているのか
(支援対象)
「困っているから支援する」のが基本。障害があるからやる、法令で定められているからやる、手帳をもっているからやる、そういうことではない。「困っている」は多様で複雑。要支援/支援不要をカテゴリーで線引きはできない。シンプルに、「困っているから支援する」
発達障害に関わる法令のレビュー)
・合理的配慮とは何なのか?「均衡を失した又は過度の負担を課さないもの」において個別に措置されるものであり、正当な理由なく合理的配慮を行わないことは、障害による差別にあたる。では均衡とは何か?過度とは何か?
・「合理的配慮」を考える6つの視点。①機械の確保②情報公開③決定過程④教育方法等⑤支援体制⑥施設・設備(小川,2014)
(業界の状況)
・診断書がある、外見で判断できるなど、「わかりやすい障害」学生よりむしろ「目に見えない障害」学生の方が多い(4割)
発達障害として支援している、と大学が考えている学生のうち、診断書を持っているのは3割に過ぎない
・残りの7割は「発達障害学生・怠学生」の境界、グレーゾーンにいる
京都文教大学 教務課での取組み例)
・門前払いをしないルール。必ずひとこと理由や話を聞く。帳票(事情書・遅延届など)を作成しておき提出させる。窓口での即断はリスキーなので極力しない。窓口では傾聴し、帳票をださせ、複数の人間で検討し、判断する(バックオフィス機能)。プロ(臨床心理士兼教務部長)の意見を聞く
教務課窓口「クレドまだ完成には至っていないが…:「完璧」ではなく、「最適」な窓口対応を目指す)
・大学は教育の場である
・窓口でのやりとりは学生サービスもさることながら、教育に繋がる学生成長の場である
・窓口での支援とは、ルールを守らせることだけではない。ただし逆に甘やかすことだけでもない。支援において、ルールを守らせることも、特別措置をすることも必要
・特に17時以降の窓口対応は、ある意味コミュニケーションが発生する。ダメなものはダメと教える機会でもあり、繰り返さないためにも時間をかけて学生に気づきを与えないといけない学生指導・支援の時間である
・よって17時以降の窓口対応は、重要な教育機会(=チャンス)であると捉えよう
(これからの職員に必要な力)
・支援対象者の特性や量を正確に理解する
・支援は「躾け」「発達支援」があることを知る
・「SOS」を察知する能力を磨く(磨くしかない、センスが必要)
・「平等性」も「(個別)正義」もあるということを理解する
・思いつきやKKDで動かない。支援は深い。謙虚に、控えめな気持ちを持つことが必要。正解はない
・個人の職人技ではなく仕組みを作り組織力に帰結させる
【質問】
・男女によって対応を悩んでいる。これは男性の方に任せた方がいい、これは女性の方が、そういうことはあるか
→性別とポジションの両方がある。ポジションに問題がなければよい。また、男女というよりも、パーソナリティや相性というのがある。正解はない。誰がカウンターにいくかわからないので保障できないが、門前払いしない、一言声を掛けるなどが必要。完璧にはできない
・貴学ではこういうことに対するSDをされているか?
→正直できていない。一部アカハラ研修を年1回やっているが、怠学生・発達障害・グレーゾーン。このあたりの研修は全然できていない。過去に職員研修で論点として出した程度。「鍛える学生が必要だ」というと、過剰に「支援が必要だ」という声があがってしまう。課内では知識はあがっている。ケースがあるたびに共有し、ワークをしている。専門的なことはまだまだできないが、本学内では一番詳しい自信がある

【企画②】(グループワーク)
講演の内容を踏まえ、要支援学生へのサポートについて、ケースワークを元にグループで検討・発表した。