松宮慎治の憂鬱

'04京都橘高校卒→'08大阪教育大学卒、私立大学に職員として奉職→'17広島大学大学院教育学研究科博士課程前期高等教育開発専攻修了,そのまま後期課程在学中。とあるきっかけ(http://shinnji28.hatenablog.com/entry/2015/01/10/050000)があって、実名でブログを始めることにしました。特に憂鬱なことはないのですが、大学職員仲間がタイトルを考えてくれたので、そのまま使います。

大学院入試の際に提出した研究計画書を公開

広島大学大学院教育学研究科(博士課程前期)高等教育開発専攻の、9月入試の際に提出した研究計画書を公開します。実際にはさらにここから削りました…1,500字以内でかつ原稿用紙に手書きという厳しい制約があり、書き始めてからさらに削らなければならないことに気づいたからです。なお、この計画書は5人の方に見ていただき、色々なコメントをいただいた結果です。見ていただいたのは、教員1名(この専攻の博士修了)、他大学の職員3名(この専攻の博士在学中1名、この専攻の修士修了1名、他大学のおそらく修士修了1名)、勤務先の後輩1名(他大学の修士修了)の計5名です。その節はありがとうございました。

 

研究テーマ:日本型IR人材の養成方法に関する研究―大学職員の役割に着目して―

 本研究は、大学職員の役割に着目し、日本のIRの担い手たる「日本型IR人材」の養成方法を明らかにすることを目的とする。

 Institutional Research(以下、IRと略す)は、1960年代の米国において急速に発展した概念である。IRは現在も発展の過程にあるため、米国においても様々な定義が存在している。本研究では、意思決定への関与に着目することから、IRを「機関の計画立案、政策形成、意思決定を支援するための情報を提供する目的で、高等教育機関の内部で行われる調査研究」(Saupe、1990)と定義する。

 日本でIRが注目される背景には、大学間競争の激化が挙げられる。各大学が多様化・大衆化・国際化する中で、ステークホルダーに選ばれるために、①学習成果の提示、②社会への情報公開、③意思に基づく戦略的な大学運営の3点が求められている。これらに寄与する手段としてIRが期待されており、浅野ら(2014)によると、現在、日本の約4分の1の大学が何らかのIR組織を有している。

 しかしながら、この現状はIRを推進しようとする政策を始めとする外部環境の後押しにより、形式的な組織整備が先行された結果である可能性が否定できない。実際に各大学においては、第三者評価対応や補助金獲得を目的として組織編成が進んだ背景もある。また、日本のIRが短期間での適合を目指し、異なる文化や社会経済システムを持つ米国のIRを機械的に模倣している(加藤・鵜川2010)ことも、形式が先行する要因である。

 ここから見えてくるのは、IRの実質的機能の強化と日本に適合されたIRモデル「日本型IR」構築の必要性である。また、人材を含めた機能の育成(森、2011)がその際の課題である。

 管見の限り、IR人材の具体的な養成方法を扱った先行研究は少ない。しかし、職員が鍵となることは示唆されている。高橋(2013)は、データを持っている職員組織を動かせないとIRは進まないとする。加藤・鵜川(2010)は、日本の大学における現場職員の新たな試みが、米国とは異なる形で成果を上げており、それらは本質的にIRの進化形であるとしている。そこで、本研究では大学職員の役割に着目し、日本のIR担当者の現状を分析した上で、担い手となる日本型IR人材の養成方法を明らかにする。

 方法は、アンケート調査と訪問調査、文献調査による。アンケート調査では、全国の大学にIRやそれに準ずる活動の実施の有無を問う。訪問調査では、各大学のIRやそれに準ずる活動の担当者に対し、活動における職員のありようや今後の展望等についてインタビューを行う。文献調査では、IR先進国である米国のIR人材の養成方法を整理し、日本の大学組織に適用できる部分とそうでない部分を抽出する。このように、わが国におけるIR担当者の現状を分析し、米国との融合を図ることで、日本型IR人材の養成方法を明らかにする。また、大学職員が担うことのできる範囲と役割について、その可能性と課題を示す。

引用文献

浅野茂・黄文哲・小林雅之・森利枝・山田礼子・劉文君(2014)『大学におけるIR   (インスティテューショナル・リサーチ)の現状と在り方に関する調査研究』(平成24-25年度文部科学省大学改革推進委託事業

加藤毅・鵜川健也(2010)「大学経営の基盤となる日本型インスティテューショナル・リサーチの可能性」『大学論集』第41集,pp.235-250.

高橋哲也(2013)「大阪府立大学における教学IRと大学IRコンソーシアム」『大学マネジメント』Vol.9,No.3,pp.8-13.

森利枝(2011)「第2章 私立大学におけるインスティテューショナル・リサーチ構築  に向けての検討」『高等教育におけるIR(Institutional Research)の役割』(私学高等教育研究叢書),pp.15-24.

Saupe,J.L.,1999,“The Function of Institutional Research 2nd Edition”.Association for Institutional Research