松宮慎治の憂鬱

このブログの情報は古く,今後更新しませんので,特に教職課程関連の参照元とすることは避けていただければと思います。ご迷惑かけます。2023.2.19

読書(評論)

赤川学(2018)『少子化問題の社会学』(弘文堂)を読了

本書は,少子化問題の,「言ってはいけない」タブーについて,データにもとづき社会学的に分析し,問題を提起するものである。 本書の要諦は,やはり「少子化問題の「言ってはいけない」を論じた第1章であり,一言でいえば,「日本の少子化要因の約9割は、結…

佐藤俊樹(1996)『ノイマンの夢・近代の欲望:情報化社会を解体する』(講談社選書メチエ)を読了

つい先日,以下のような技術革新を話題にしてしまったばかりであるが, shinnji28.hatenablog.com 本書はそうした技術革新(「情報化社会」)が単なる幻想=「近代産業社会がその内部にはらんでしまう夢」(p.220)であることを喝破したものである. 「情報…

柳川堯(2018)『P値:その正しい理解と適用』(近代科学社)を読了

標記の本を読了した. データにバラつきがあり,それが確率法則に従って起きることを出発点として,基本的事項から誤用,算出方法,検定,サンプルサイズとの関係等が丁寧に説明されている.P値 ―その正しい理解と適用― (統計スポットライト・シリーズ)作者:…

2018年12月に読了した小説,エッセイ,漫画

傍流の記者作者: 本城雅人出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2018/04/26メディア: 単行本この商品を含むブログを見る宝島作者: 真藤順丈出版社/メーカー: 講談社発売日: 2018/06/21メディア: 単行本この商品を含むブログを見る七十歳死亡法案、可決 (幻冬舎文…

牧原出(2018)『崩れる政治を立て直す:21生起の日本行政改革論』(講談社現代新書)を読了

標記の本を読了した. 本書の要諦は,小泉改革以降の政官関係を,官僚制組織の「作動」に焦点をあて,第1次安倍政権と民主党政権がその「作動」に失敗したと喝破したことにある. ここでいう「作動」とは,同じ改革を行うにしても,構造が「静かに変化が起こ…

小笠原祐子(1998)『OLたちの〈レジスタンス〉:サラリーマンとOLのパワーゲーム』(中公新書)を読了

おススメいただいて,標記の本を読了した(麦山さん,ありがとうございます)。 本書は,OLを暫定的に「正社員として、現在及び将来にわたって管理的責任を持たずに、深い専門的もしくは技術的知識を必要としない一般事務的、もしくは補助的業務を行う女性」…

ディル・ドーテン(野津智子訳)(2002)『仕事は楽しいかね? 2 』(きこ書房)を読了

標記の本を読了した。 たしかに面白いのだが,個人的には1の方が上だった。 しかし素晴らしいシリーズであることは間違いない。仕事は楽しいかね?2作者: デイル・ドーテン出版社/メーカー: きこ書房 発売日: 2015/01/20メディア: Kindle版この商品を含むブ…

フレデリック・ラルー(嘉村賢州、鈴木立哉訳)(2018)『ティール組織:マネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現』(英治出版)を読了

標記の本を読了した。 本稿の要諦は,組織モデルの発達段階として,①衝動型(レッド):恐怖による支配 ②順応型(アンバー):官僚制 ③達成型(オレンジ):実力主義 ④多元型(グリーン):ミュニティ ⑤進化型(ティール):生命体型組織の5つを示し,最後の⑤がどのよ…

アルン・スンドララジャン(門脇弘典訳)(2016)『シェアリング・エコノミー』(日経BP社)を読了

標記の本を読了した。 本書が描く「シェアリング・エコノミー」的未来は,次のような状態を指す。 1 おおむね市場に基づく──財の交換が行なわれ新しいサービスが生まれる市場が形成され、より潜在力の高い経済活動が実現する。 2 資本の影響力が大きい──資…

田中明彦(2017)『新しい中世:相互依存の世界システム』(講談社学術文庫)を読了

標記の本を読了した。 本書のキーワードである「新しい中世」は,冷戦終結や欧米の覇権の後退後であるポスト近代を示すものである。 ここでいう「新しい中世」は,ヨーロッパの中世とポスト近代が「似ている」と考えられるところからきている。 どこが似てい…

大村大次郎(2012)『税務署員だけのヒミツの節税術:あらゆる領収書は経費で落とせる【確定申告編】』(中公新書ラクレ)を読了

標記の本を読了した。 読み始めてすぐに,「これはフリーランス向けだったか,失敗かも」と思ったが,第1章にサラリーマン向けの記述があった。 筆者自身が言うように,この部分だけでも買う価値があると思う。税務署員だけのヒミツの節税術 あらゆる領収書…

河合雅司(2017)『未来の年表:人口減少日本でこれから起きること』(講談社現代新書)を読了

標記の本を読了した。 本書は産経新聞社の論説委員が産経新聞紙上で展開した連載「少子高齢時代」にもとづき執筆されたものである。 第1部では,「人口減少カレンダー」として,人口減少に伴って生じる20の問題を時系列に示す。 第2部では,第1部を踏まえた…

河野勝(2002)『制度』(東京大学出版会)を読了

「社会科学の理論とモデル」シリーズの12巻目である。 政治学の立場から,制度とは何か,制度学派の諸潮流,現代の政治制度,近代的統治構造,民主主義の制度について解説されている。 自身の問題関心は前半にあったが,わかりやすかった。制度 (社会科学の…

太田肇(2010)『日本人ビジネスマン「見せかけの勤勉」の正体:なぜ成果主義は失敗したか』(PHP研究所)を読了

標記の本を読了した。 本書で特に印象に残ったのは,第2章における意欲を失わせる要因の分析である。 そして,管理監督者はこの意欲を失わせる要因をできるだけ取り除けばいい,とある。 要因は「足かせ」として,5つ示されている。 足かせ1 〈くすぶる、残…

佐藤航陽(2017)『お金2.0:新しい経済のルールと生き方 』(幻冬舎)を読了

話題作を読了した。 本書で述べられていることは,ぼくなりに解釈すると, (1)既存の経済システムに新しいサブシステムが登場しつつある (2)新旧の経済システムには,共通点がある (3)新しいサブシステムは,既存の経済システムと併存可能である の3点…

野崎昭弘(2017)『詭弁論理学(改版)』(中公新書)を読了

標記の本を読了した。かなりの名作である。本書では,代表的な詭弁と,その対象法が書かれている。 たとえば,大学においてよく聞く詭弁が,「aを認めてしまったら,Aも認めらなければならなくなる。だからaも認められない」というものである。 しかしながら…

佐藤文彦(2017)『プロ野球でわかる!はじめての統計学』(技術評論社)を読了

標記の本を読了した。 本書で取り扱っているのは野球のデータであり,分析手法としては,相関分析,統計的仮説検定,分散分析,回帰分析をカバーしている。 中学生の頃,高校野球の防御率の計算等をしていた身としてはなじみやすい。 前半部分に,データ分析…

八代尚宏(2017)『働き方改革の経済学―少子高齢化社会の人事管理』(日本評論社)を読了

標記の本を読了した。 本書の要諦は,「はじめに」で全て語られていると言っていい。 アベノミクスの第三の矢である労働市場改革について,現状の整理,近年の政策の問題点,企業内人事への新たな提案がポイントとなっている。 中でも第3章では,非正規をな…

金成隆一(2017)『ルポ トランプ王国――もう一つのアメリカを行く』(岩波新書)を読了

標記の本を読了した。 「トランプ王国」というのは,共和党の予備選でトランプが圧倒的勝利を収めた地域のことであり,基本的には地方であるという。 本書ではいくつもの論点が取り上げられているが,最大のものはトランプが支持された理由である。 トランプ…

フィリップ・アリエス(杉山光信,杉山恵美子訳)(1980)『〈子供〉の誕生:アンシァン・レジーム期の子供と家族生活』(みすず書房)を読了

標記の本を読了した。 本書では,〈子供〉という概念はそもそも自明ではなく,中世以降に社会的・制度的・文化的に縁どられてきたものにすぎないことが述べられている。 筆者によれば,17世紀までの中世芸術を紐解くと,〈子供〉の存在は描かれていなかった…

トッド・ローズ著・小坂恵理訳『平均思考は捨てなさい―出る杭を伸ばす個の科学』(早川書房)を読了

標記の本を読了した。 読み終わって思うことは,タイトルの「思考」は「志向」と読み替えることもできるなあ・・ということである。 つまり,本書で取り上げられているのは,平均「思考」への批判であると同時に,「志向」への疑義でもあると思うのである。 …

佐藤綾子著『小泉進次郎の話す力」(幻冬舎)を読了

最近,自分がプレゼンを舐めすぎているなと感じていた。 つまり,ほとんど直前まで準備せず,出番の30分前くらいからどう話すか考え始めるようなことを最近はしていたからだ。 これには理由があって,学術の場だと結構,スキルに関係なく中身を評価してもら…

今井むつみ著『学びとは何かーー〈探究人〉になるために』(岩波新書)を読了

標記の本を読了した。この本はすごい。 筆者は認知科学や言語心理学の研究者で,「学ぶとはどういうことか」ということを,きわめてわかりやすく解説している。 前段では,「そもそも知識とは何か」という問いから始まり,記憶とはどう違うのか,知識の体系…

元永知宏著『期待はずれのドラフト1位――逆境からのそれぞれのリベンジ』(岩波ジュニア新書)を読了

標記の本を読了した。 ジュニア新書なので,漢字にルビが振ってある。 期待はずれのドラフト1位がそこからどう人生を歩んだか,がドキュメンタリーとして追われている。 最も印象に残ったのは,自身の記憶にも残っている的場寛壱選手(1999年阪神タイガース…

谷崎光著『日本人の値段ー中国に買われたエリート技術者たち』(小学館)を読了

随分前に購入した標記の本を読了した。 端的にいえば、日本メーカーの技術者が中国に高額年俸で引き抜かれ、技術が流出する実態を追ったドキュメンタリーである。 自分にも技術者の友人がいるので、身につまされた。 機会があれば意見を聞いてみたい。日本人…

桐谷ヨウ著『仕事ができて、小金もある。でも、恋愛だけは土俵にすら上がれていないんだ、私は』(ワニブックス)を読了

標記の本を読了した。 「天才恋愛コラムニスト」の桐谷ヨウ氏の著作であるが,彼はネット上では「ハーレンファイト」の名前で活動している。 ところで,ぼくはなぜこの本を買ったのだろうか? 全く覚えていない。病んでいるのかもしれない。仕事ができて、小…

井上理津子著『さいごの色街 飛田』(新潮文庫)を読了

とんでもない作品を読んでしまった。 まさしく渾身のルポルタージュである。さいごの色街 飛田 (新潮文庫)作者: 井上理津子出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2015/01/28メディア: 文庫この商品を含むブログ (5件) を見る

ポール・ウィリス著,熊沢誠・山田潤著『ハマータウンの野郎ども』(ちくま学芸文庫)を読了

実際に購入したのは随分と前なのだが,積読になっていた標記の本をようやく読了した。 本書は,イギリスの学校教育制度において,労働者階級の子どもたち(「野郎ども」)がいかなる理由で学校文化へ反抗し,肉体労働へ順応していくかを描く。 ぼくもこのブ…

佐藤敏郎監修,雁部那由多・津田穂乃果・相澤朱音著『16歳の語り部』(ポプラ社)を読了

本書は,東日本大震災に小学校5年生で被災した3人の子どもたちが,16歳になった今,それぞれの「語り」によって当時を思い返すという趣旨である。 鬼気迫るというよりは,どちらかといえば描写は淡々としているのに,それがまた深刻さを増すことになる。私が…

堀江貴文著『99%の会社はいらない』(ベスト新書)を読了

標記の本を読了した。 思ったのは,「そんなにホンマのことばっか言うてたら,刺されてしまうで…」ということである。 しかし,内容より驚いたのは,小池百合子氏を一部で取り上げていることだ。 言うまでもなく,この本は小池百合子の出馬のシュの字もない…